諏訪敦彦監督,2005,『不完全なふたり』(出演:ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ/ブリュノ・トデスキーニほか,フランス=日本,カラー)

を観た.細かい部分はほとんど即興で撮られた映画だそうである.固定の長回しがしつこくて,途中眠ってしまったが,あけすけで身も蓋もない感じの描写は,デプレシャンを彷彿.だから,悪い映画ではなかったのだろうとは思うのだが,しかし,「よいリアリズム」と「悪いリアリズム」がある,という,あまり4年前から変わっていない問題意識を抱いて終わった.リアリズムはそれ単体で擁護されるべき価値ではない.のだろう.と思う.たとえばあるナイーヴさをナイーヴなまま描くことは,そのままではこれもまたナイーヴなリアリズムであり,とうてい擁護されうるとは思えない.これを社会学では,調査対象者の抱いている曖昧な認識に対して調査者が無批判に同調することをして「無知の共謀」と名付け戒めているのである.アーティキュレイト不可能なものとして表象されたのであろう生のナイーヴさを,やはりいかにアーティキュレイトするか,が,再び問題となるのである.