珍しいキノコ舞踊団『あなたが「バレる」と言ったから』(振付:伊藤千枝,出演:山田郷美・佐藤昌代・伊藤千枝,グリーンホール相模大野多目的ホール)

を観に行った。はるばる相模大野くんだりまで!新宿から急行で40分かかったので、これでつまらなかったらどうしようとか思ってしまったのだが、杞憂であった。音楽の音量が素晴らしく適切で、大きいところは最大限大きくしてあって、ライブ芸術の音はやはり大きくないとなーと思った。アフタートークでも近い話題が出ていたけれど、今回は振付が音楽に寄り添う感じというか、音楽を聴いたときに受ける印象とかがたいへん素直に振付になっているという、ピナ・バウシュの『春の祭典』のような感じであった。それで、ユニゾンとかリフレインとかがひたすら幸福で、あーもうどうしようこれは、あわや滂沱、となりそうになったところで、「お前はその中途半端に不安定な情緒でもって安易な感情移入をして泣くのか。幸福感を過去に仮託して自己憐憫か。はたから見たら変な客だぞ。第一そんな風に泣いたところで一瞬気分がよくなるだけでまた同じことを繰り返すのだ。ドラッグと同じ、永劫回帰ドミナントモーションだ。ははは」という内語があったかどうかはともかくとして(というかないけど)、とにかく踏みとどまった。踏みとどまったのだ。そこでBOATの"ALL"が。流れたのです。曲が始まった瞬間にもうまさになんとかの準備は出来ていたという感じで、今から思い返してみればなんでこのとき「あー、この曲にダンスなんかつけたら曲が勝っちゃうよ」と思わなかったのか不思議ではあるが、それだけ"ALL"までもって行くもって行き方がうまかったということなのだろう。あえなく、身も世もあらず、滂沱。今までのキノコのなかでも最高の舞台であった。