ニブロール『ロミオ OR ジュリエット』(振付:矢内原美邦,映像:高橋啓祐,衣裳:矢内原充志,音楽:スカンク,世田谷パブリックシアター)

を観に行った.前評判によれば「よく分からん」「つまらん」ということだったので,心の準備は出来ていたが,まぁそんな感じだった.振付,映像ともにクオリティが高く,特に振付は前作『no direction。』よりはるかに独創的でハイスピードであった.しかし,そこに表現力は感じられないのであった.情動に結びつかないテクニックであった.それは,おそらく,映像と音楽と衣裳と振付の歯車が噛み合っていなかったからであり,特に,スケール感の違いが決定的な問題点であると感じた.たとえば,衣裳などは特にリアルクローズとの距離の取り方において,作品全体の中で誤ったポジショニングであったように思えてならないし,それは映像も同様である.そこに調和はなく,情動は生まれない(正確に言えば,キレのある動きなどが単発で感動的であることはあっても,その打線がつながっていかない).プロデューサー集団としてのニブロールという形態が,おそらく,悪い方に作用した結果だろうか,ミクニヤナイハラプロジェクトや,オフ・ニブロールの作品はよいものが多いので,この本家であるはずのニブロールがなんだか元気がないのは,やや不思議ですらある(そう,元気がない.「いびつ」とか,そういう逸脱的で破壊的な形容詞が似つかわしくない感じ).