『吾妻橋ダンスクロッシング The Very Best of AZUMABASHI』(企画・構成:桜井圭介,アサヒアートスクエア)

に行った.これに行かないでどうする!という位の感じだったが,蓋を開けてみると意外と満足度は低かった.オープニングの身体表現サークルは切れ味悪く,またその悪い切れ味も楽しめる感じではなく,だめ.続いて康本雅子「姉?」は前回の吾妻橋でやった「姉」のバリエーションだったが,素晴らしい!素晴らしいよ本当に素晴らしいよ.大好きである.照明と音楽とちゃんと有機的に結合したダンスで,もう本当に凄い.コンテンポラリーダンス一般がそうだとは思うが,康本雅子の振付は日常動作系と抽象ムーブメント系の二種類があって,そのどちらも素晴らしく,からだに対する驚きと喜びがある.続いてボクデス&チーム眼鏡「小手指商事・営業課」は「親指商事」のバリエーション.相変わらず面白い.豪華メンバーだ.そして完成度が徐々に上がっていっているような気がして,いい感じなのである.次は身体表現サークル「ザ・ベスト」.身体表現サークルは初見だったが,まぁ,イマイチだった.あれじゃ本当に大学のサークルみたいだ.そして,それにお金を出す気はあまりしない.日本のコンテンポラリーダンスシーンにおいて猖獗を極めているヘタウマ傾向は,うまくいけば大変おもしろいことになるが,しかしうまくいかないとこれは大変まずい.コドモ身体とかって言ってもそれはやはりヘタウマの一種であり,また実際のコドモの身体はいわゆるコドモ身体のダンスとは比べものにならないくらい面白い.前半最後は宇治野宗輝&ザ・ローテーターズ「EVEN THE BEST CAN GET BETTER WHEN IT'S BIGGER」で,発想としてはオプトロンと同型だと思うのだが,オプトロンの方がかっこいい.休憩中に観たチン↑ポムという,まぁコメントは控えたい感じの人々が,というか,こういう人たちと正対しようとすると,これは困難だなー.で,その映像のなかで会田誠が大変ひどい感じでパラパラを踊っていて,もう本当にげんなりだ(でも冷静になってみるとあれは会田誠ではなかったかも知れない).休憩明けはOff Nibroll「chocolate」.大変よろしかった.Nibroll「no direction。」よりよかったのではないか.というのも,ピナ・バウシュのオハコであるところの,「何かが無意識に訴えかけてきてなんだか知らないけど泣ける」感じ全開だったからだ.この感じは,上の分類で行くと日常動作系の振付がいかにうまいかということにかかっている.矢内原美邦とデュオで踊った佐川智香も大変素晴らしい.と思って検索してみたら,以前「親指商事」で唯一出ていた女の人だった.と,さらに検索したら森美術館六本木クロッシングという展覧会(2004年)でコンテンポラリーダンスベリーベストみたいなものをやったらしく,そのメンツがあまりに今と変わっていなくて,何という入れ替わりの少なさ!ちなみにこの「chocolate」の後半では椎名林檎の「おだいじに」が使われる.次は再び康本雅子「ブッタもんだすって」.素晴らしい!身体表現サークルの常楽泰と共演.続いてほうほう堂×チェルフィッチュ「ズレスポンス」.作品名は以前のほうほう堂×チェルフィッチュ名義のものと同じだが,中身は全然違う.そして,退屈であった.眠ってしまった.終わっても拍手が起きなかった.どうしても,からだと動きがどうしようもなく魅力に欠けているように思われて,味のないご飯のようである.やってることは分からなくもないのに,それがすべて取って付けたような感じなのである.自分の感性の毛穴が開いていない方面のダンスなのかも知れないが,よく分からない.最後はKATHY「MISSION / R」.基本的に客いじりに類することが大嫌いなので,嫌いだ.表象文化論学会のオープニングに,チェルフィッチュ室伏鴻とともに呼ばれたというので少し期待していたが,よくわからん.ボーナス・トラックは小浜正寛がカニをぶんぶん振り回すというパフォーマンスで,カニの足がぶちぶちもげて何か液体が飛び散ったりするのだが,しかし生き物をそのように使うのに嫌悪感があって,嫌い.鉄割のネギは,よかった.というわけで,見るべきものの意外と少ないイベントだったが,初見の身体表現サークルKATHYを興味の埒外に効果的に追いやったという点では,まぁよかった.しかし長く書きすぎたなこれは.