阿佐ヶ谷スパイダース『イヌの日』(作・演出:長塚圭史、本多劇場)

を観に行った。なんだこれは。もちろん笑えるところは笑えるのである。しかし、だ。途中から物語りの構造上、笑えないところでも笑わせようとしていたりとかして、何がしたいんだ。長塚圭史は人間観が甘い、と聞いてはいたものの、そうか、こういうことか(ちなみに甘いとか幼いとかいうのはあまり感心しない用語法だ。シビアな人間観で大人ぶる中学生じゃあるまいし、甘くなければいいというものではない。また、幼い方がいいこともある、というか、matureでない態度を選択すべき場面があると思うのである。後述。)。要するに、安易でヒロイスティックな心理主義なのだ。トラウマパラダイムと名付けてもよかろう。自己憐憫だ!そして味付けにドラッグとセックス。この辺出しときゃあんたらは満足なんでしょうくらいの勢いで作られているとしか思えないディテイル。しかし現実はおそらくもっと救いがなくて、作ってる側も無自覚なのだな。終演後の拍手の長さはあきれるほどで、つまり観る側も実際に満足しているのだ。愚かな!みんなが夢中になって暮らしていれば何でもいいのか。非エリートには覚めない夢を、か(エリートというのは人より多くのことが出来る人間ではなく、人より多くのことをしなければならないと思い込んでいる人間のことだ)。結局それは相対主義なのである。そしてそれは間違いだ。主義主張や好みの、趣味の問題ではなく、事実として違う。コミュニケーションは可能だ。という意志だ。そういう人たちはそういう人たちで尊重しましょう、みたいな、いわゆる「オトナ」な態度なんて犬に喰われればいい。あ、そういえばタイトルの「イヌの日」の意味がいまだにわからん。分かったら評価が180度転換したりするかしら。人を傷つけるようなことを言ってはいけませんみたいなオトナな態度は、要らないのである。どんどん傷つけたらいい(もちろん正確に言えば「人を傷つけることを回避するな」、となる)。あー、しかし、なんだ。やれやれだぜ。って感じだ。うんざりする。クレヨンしんちゃんが「うんこまみれのザリガニ略してうんざり」と言っていた。うんざりって気持はまさにそんな感じなので、そう、しんちゃんはすごいよ。