マシュー・バーニー『ジ・オーダー』

を観た.DVDで.神話,というものについてよくは知らないのだが,シンボリックな構造と,その構造をぼやかしてねじれさせて螺旋状に配置することなどは,神話的であるように思う(神話について知識がないのに,不思議だ).そのごくごく単純な美しさにも関わらず,こういう作品に関してはまたぞろ「意味が分からない」という感想なども聞かざるを得ないだろうけれども,「意味が分からない」という言葉こそ意味が分からない.いや,分かる.「意味が分からない」という常套句に,色々な微妙な感覚や感想が水路づけられて一緒くたに流し込まれてしまっているのだろう.そうやって,考えるのをやめたり,あるいは行動するのをやめたりするために,言い訳をすることは往々にしてあり,そういうつまらないことをする奴らは片っ端から罵倒していきたいと思う.考えるのをやめようとするのは,つらいからだ,と言い訳をする奴らには,それはそもそもの考え方が不健全だからだ,と面罵したい.小さい頃から与えられ続けた,ヒロイスティックで佯狂的な,自己欺瞞の言説を,内語として繰り返してばかりいたら,それはつらいだろうけれど,そういうものを相対化する思考は,むしろ解毒こそすれ苦痛を与えたりなどしないだろう.これだけ言ってもまだ,自分を幻影から守るために精一杯で,根拠のない頑迷さによって,安易な夢を見るひとに対して,いったい何が出来るだろうか.安易な夢でも良いじゃないか,と言うひとに対して,そんなものより,本当の世界の方がもっと素晴らしいと,いったい今でも言えるだろうか.世界に押しつぶされそうだと思っているひとに,押しつぶそうとしているのはその人自身なのだとどうやって教えられるだろうか.自分のことをかわいそうだと思いたがることとか,本当に,何なんだろうか.いずれはもっと,美しいことの方へ行きたい.