阿部和重,2003,『シンセミア 上』朝日新聞社

読了.だいぶ以前に古本屋で買って積ん読だったのを,いよいよ寝付きが悪くて読み始めたところ,止まらなくなって順調に朝を迎えた,というのをふた晩続けて読みおわった.要するにめちゃくちゃ面白かったのだが,同時に重く,そしてその重さに寄りかかることを許さない漫画っぽさもあり,混乱した.しかし何より,今となっては,博徳と和歌子が渋谷に行くのは上巻の後半のことであり,それについて書かずにいるのは難しいようにも思うが,しかし何を書くというのか.盗撮や,宇宙人,幽霊の噂など,あまりに現代的な,そして分節化の難しい,時代の手触りというかまぁ有り体に言ってリアリティのことだが,そういった事柄についてよくもまあこんな風に書くということを成し遂げてくれたものだ!順番が悪かった.いずれにせよ,6/8より後に読み始めるべきだったのだ.この順序を間違えた所為で,自分の鈍さという衣がはぎ取られて,出来事が直截にダメージをもたらしたのだった.