夏目漱石,1975,『吾輩ハ猫デアル』ほるぷ

読了。論争系の本ばかり読んでいてなんだか言葉遣いが荒れてきているような自覚だか錯覚だかとにかくそんな感覚を覚えた(実際、自分が書く文章は読んだ文章に驚くほど似る。みんな似たようなことは思っているのだろうが。)ので、ずっと漱石を読みたいと思い続けて、読んだ。恒例、日本文学館による初版の復刻。三巻分刊で今回読んだのは上編に当たる部分だが、現在の出版形態はどうなっているのだろうか。それにしても愉快!まるでエッセイだ。何度も声を出して笑った。宮沢章夫ナンシー関などが文章中で多用するノリツッコミがすでに散見されるのが驚きである(お笑いのことはまったく知らないが、おそらくお笑いにおけるノリツッコミと文章におけるそれの相違点は、文章におけるツッコミの対象の多くが何らかのクリシェであるということだろう)。それにしても話によっては異様なまでにテンションが高く、なんだか心配になるほどのカリカチュアライズがあったりして、一読漫画っぽい印象を受ける。二読はしてないので分からないが、とにかくかなり躁っぽい。おかげで躁が伝染ってしまったじゃないか。それにしても他の作品のどの登場人物よりも、苦沙彌先生(の描写)にはなんとも勇気付けられる。