Beckett, S., 1952, EN ATTENDANT GODOT, Paris: Minuit.(=1990,安藤信也・高橋康也訳『ゴドーを待ちながら』白水社)

読了.この作品はデレク・ベイリーに似ている,などという放言をしたが,まぁあながち放言とも言い切れないかも知れないのは,そのフォルムが問題になっているという点である.言説のフォルムを美学的な対象とするということは,実は高校生の頃によくやっていたことにいま気づいた.友人と一緒になって,「いい話だ」とか言って,したり顔でにまにましていたのだから,思い返すだになかなかおぞましい男子高校生だが,そう,ある特定のフォルムをもった話を,「いい話だ」と言って喜んでいたのである.言説におけるフォルムは,純粋に意味論的なものではないが,統語論的なレベルの話でもない.たとえば美しいフォルムとは,「予言の自己成就」のフォルムである.