『プーシキン美術館展』(東京都美術館)

に行った。すこぶる人が多かったので帰ろうかとも思ったがそこはぐっと踏みとどまる。なぜあんなに高齢者(と呼ぶにはちょっと若かった気もするが、少なく見積もっても初老と呼ぶのは構わないだろう)ばかり来ていたのだろうか。みなおおむねマナーが悪く、その上作品自体はほとんどみないでキャプションを読んで過ぎ去っていく。隊列を組んで。そんな様子に以前ほどいらいらしなくなった自分の変化などに思いをめぐらせながらも、久しぶりにじっくり、遠くから近くから遠くから絵をみた。素晴らしい作品ばかりだった。おそらくは至極当たり前のこと(というか何をいまさらなこと)なのだが、はじめに遠くからみて全体の色調や構図、計算された視線の流れなどを確認した後にじっくりと近くでタッチや色の重ね方、ディテイルなどについてみて、その後二度目に遠くからみると全く違う作品にみえる。この展覧会まで名前を知らなかったのだが、エドゥアール・ヴュイヤールの『室内』という作品では、本当に絵のみえ方が面白いように変わっていった(ヴュイヤールの作品は他のもなかなかよかった)。カタログでは絶対に味わえない感覚、ということも不思議と言えば不思議であって、翻ってカタログの見方が変わる、そんな感覚であった。