宮部みゆき,2007,『誰か』文藝春秋

読了.こういうものを読み慣れていないからかも知れないが,たいへん面白かった.世の中には,精神の安定のために推理小説を読む人というのがいるらしい(あたかもバッハを聴くように).強靱な物語の推進力が,精神の安定に寄与する.とかいう言い方はあまりにインテリマッチョな感じであって,常に最新の「不安定な精神」を身にまとう必要などどこにもない.絶望したがったり混乱したがったり,そういうことをさらっとやめてみたその後に,それでも残る不安のために推理小説を読みたい.