パラドックス定数『三億円事件』(作・演出:野木萌葱,下北沢OFFOFFシアター)

を観に行った.面白かった!ただしプロットのラインがはっきりせず,明確なサスペンスがないので明確なカタルシスもなく,すっきりしないまま終わる.とまれ,テレビドラマを連想させる演技は,しかしやはりテレビとは決定的に異なるものであって,その差異にこそパラドックス定数の魅力の秘密があるように思う.それは,脚本のレベルで,登場人物に何か(過去とか事情とか)を「背負い込ませる」ことと相まって,苦境に矜持を保つ男!というマッチョなカッコよさになって舞台上に現れる.現実においては,そうそう過去など明らかにならないものだし,明らかになっても,フィクションならカッコいいことが,ちっともカッコよくなかったりもして,過去というものはなかなか扱いかねる.扱いが難しいなら,自分という存在に完全に溶け込めよかし.