劇団地上3mm『落下傘―夏の終わりに師について考える一週間―』(坂口安吾「霓博士の廃頽」太宰治「駆込み訴え」川口典成「夕焼け先生についての一考察」,吉祥寺bar drop)

に行った.特筆すべきは太宰の「駆込み訴え」で,これははっきりともう,ひとつの達成と言っていいクオリティの,ひとつの作品と言っていい達成であった.これを観ろ.演劇を観る人は,これを観なければいけない.この作品は役者はもちろん他にも色々と,素晴らしいが,やはり原作の小説を,新しい別の素晴らしい作品に出来ている,というのが何と言っても素晴らしい.ファンタジアの「魔法使いの弟子」の方向である.これは至極真っ当な方向であるが故にまた容易ならざる方向であって,ただごとではない.だいいち,グルーヴがあったじゃないか.と,そうか,演劇もグルーヴか,と,今さらながらに,合点がいった.合点合点.ポストトークタニノクロウさんも仰っていたが,タイム感とか,オンタイムであることとか,フレーズとリズムの関係とか,だからクリック演劇みたいなものがあって,クリックにアホみたいに乗っかるでもなくアホみたいにそこからぐだぐだに逃避するのでもなく,おそらくそのクリック感を絶妙にどうにかしていこうという方向,は,YMOじゃないか.そう言う意味では,演劇においても,リズムセクションなりリズムマシーンとしての誰かがいなければならないのだろう.強烈にタイム感とフレーズを,ただの8ビートから発散できるようなドラム,みたいな人がいると,あとは結構どうにかなるのではないか.先日の『紙風船』上演において入っていたピアノに,この方向性に向かうすでに兆しはあった.