江戸川乱歩,1984,『日本探偵小説全集2 江戸川乱歩集』東京創元社.

読了.素直にめちゃくちゃ面白かったので,自分はとても素直な人間なのだろうと思う.猟奇的な描写やゴシックの暗いナルシズムに厭な感じを覚えながらも,夢中になる.読後には,自分の世界と違う世界(しかしすぐそこにある!)を覗いてしまったような,夢を見たような気持ちになり,些か陶然と,と,怪奇小説をこっそり読んでしまった女学校の生徒のような素直さだ.まぁ自分のことを素直素直と書いていると,読者にはこれまた素直に「こいつは馬鹿だ」と思われかねない.ちなみに所収の「パノラマ島奇談」には,横山裕一が『NIWA』で挑戦している(と思われる).建築・彫刻・絵画・詩・音楽という一元図式では,建築の次に「パノラマ」あるいは「庭」「テーマパーク」「都市」が来ないのは,今まで「作品」として存在しなかったからか.乱歩は,次は少年探偵団とか怪人二十面相とかが読みたい.ちなみに横山裕一は最新作『アウトドア』がhttp://moura.jp/ecologue/ecomic/index.htmlで読める.特に"comment"というのがついていて,初心者にもやさしい.そう,横山裕一はまずはこういう風に「読む」のであって,やれ絵柄がシュールだとかセリフがなくて素敵みたいなことを言っている場合ではない(だいいち「シュール」って言葉を使う人は大抵何も分かっていないと思う).必見.と思ったら,岡田利規の『わたしたちに許された特別な時間の終わり』の表紙や最近のペンギンプルペイルパイルズのチラシは横山裕一で,もうそうか,見つかってしまっていたか.といつもながらのほの寂しさを味わった.