山村浩二監督『田舎医者』(原作:フランツ・カフカ,声の出演:茂山千作/茂山七五三/茂山逸平/金原ひとみほか,日本,カラー)

を観に行った.素晴らしかった!山村浩二といえばやはり『頭山』が有名だがそれは未見だったのを,今回は標題の『田舎医者』と同時上映だったので,素晴らしいプログラムであった(他に『年をとった鰐』『こどもの形而上学』『校長先生とクジラ』).以前から,動く絵という芸術としての映画(映画のこの側面はタルコフスキーにおいて純粋なかたちで見て取ることが出来る)はそのままアニメーションに接続する(こちらはノルシュテイン.ただしノルシュテインはダイナミックな動きよりは,むしろ燠火のほてりなどの動的なマチエールに特徴があり,日本のアニメーターが得意とする方向とは異なり,絵画的な側面が強い)と力説し続けてきたが,山村浩二はまさに,動く絵がいかに感興をもたらすことが出来るかを示している.もちろん,絵をぐにぐにと動かすだけではなく,そこには主題との連関があり,クレヨンしんちゃんの映画ではそれは躍動感などと結びついた形で表現されるのだが,山村浩二においてはそれはシュールレアリスティックな感覚や,もっと直截に言えばカフカ的な感覚の表現となるのである.その必然性が,有機的に作品に結実しており,まったく素晴らしい.