『9月文楽公演』(国立劇場小劇場)

を観に行った.第二部の吉田玉男一周忌追善「菅原伝授手習鑑」から初段と二段目.これで三大名作は一部分とは言え三つ観たことになるが,この菅原伝授手習鑑はその中でもっともエンターテイメント性が低く,またその分芸能としての完成度は極めて高いと感じた.エンターテイメントを追求するのであれば冗長で退屈であると思われる別れの場面が,切々と長い.文楽の脚本はその因果の絡まり方が異様に手が込んでいてちょっと異常だと思っていて,しかし菅原伝授手習鑑においてはその動機付けが逆に異常に単純であって不信を抱いていたが,原因が単純な分を結果の叙情で補って,そして余りあるのであった.いまあなたが最も観るべき舞台は,あなたが誰であろうと,文楽である.次は十二月です.