ポツドール『激情』(脚本・演出:三浦大輔,出演:米村亮太朗/安藤玉恵/町田マリーほか,本多劇場)

を観に行った.あまりに素晴らしかった.前回の『激情』を観たのはほぼ三年前で,その三日前には川口典成作演出の『サイクル』を観たのだ.今回の再演『激情』は,演出意図のフレームが非常にクリアに伝わってきて大変素晴らしい.演出意図を明確に伝えるというのは,実は塩梅が難しくて,下手にやると痛々しいことになってしまう.そこを今回は非常にうまくやっていて,しょっぱすぎない最大限まで塩を使うフランス料理の趣である.最近では,演劇を語るときに「ポツドール的なもの」を一つの座標として設定することが多々あるが,今回のポツドールはその「ポツドール」全開だ.そしてそれが,すさまじいパワーである.初演『激情』を観ているし,ポツドールは初めてではないし,後半の途中までは巻き込まれずに観ていたのだが,それでも最後には没頭していたので,このパワーたるやただごとではない.ポツドールにおいて,「リアル」ということがもはや重要ではない気がするのは,多くの優れた芸術作品がそうであるように,純粋な感情の抽出に成功しているからではないか.それは類型化された感情というレベルを突き抜けて,すぐれた普遍性という位相に到達しつつある.初演『激情』,『ANIMAL』,『愛の渦』,『夢の城』と観てきた限りで,もっとも素晴らしい舞台であった.