見田宗介,1979,『現代社会の社会意識』弘文堂

読了.所収の「まなざしの地獄」が目的.連続射殺犯の永山則夫という人物について多面的に見ていくと,現代の都市は他者からのまなざしによる地獄だ!って話.だと思う.それで,なんかそれはちょっとした古典として扱われているので,ふまえなければならないので,具体的にどのようにふまえるか,が問題だ.もちろん,もう別に地獄でも何でもないよねー,とか言うのは簡単で,素朴な実感にもよくフィットすると思うのだが,それだけに一抹の不安はある.と言うのも,そこは見田宗介も,永山則夫は決して平均的な人物などではなく,むしろ典型的な人物であり,その典型性のなかに,隠微な一般的性質を探求するという立場を取っているので,そういう意味では,昨今のニュースなどを見ていても,やはり,地獄でも何でもないなどというのは素朴に過ぎるのではないかとも思う.この,「平均じゃなくて典型なんだ!」っていう感じの思考のモードはたしかにクールなので,ファンがつくのもわかる.