マリンスキー・バレエ『白鳥の湖』(出演:ディアナ・ヴィシニョーワほか、東京文化会館大ホール)

に行った。適度な過剰さをもってして王道なものが王道の展開をすると思わず「くぅ〜〜〜っ!!」と、満面の笑みとともにひざを叩きまくってしまうような人は絶対好きだから、白鳥の湖。適度な過剰さというのは撞着語法ではありますが、ケレンの美とか、キッチュの美とかいうのと同じことであります。まぁチャイコフスキーの音楽については全然適度じゃない過剰さかも知れないのだが、それはそれだ。丹念に曲の展開を注意して聴いていけば(要するに時間芸術であるところの音楽をちゃんと聴くというのはそういうことではあるまいか)、その過剰とも思われる盛り上がりにもちゃんと説得力が付与されてくることだろう。お目当てはヴィシニョーワだったのだが、微妙に安定感に欠けるように思われるところがありながらも、腕が美しい!ちょっと人間とは思われないくらいで多少気味が悪くないこともなかったが、燦然と煌くスター性があったのであった。そういう意味では、円や球を思わせる圧倒的な調和と安定のザハロワの方がよほど好みではある。マリインスキーはオケにもコールドにも随所にほころびが見られ、なんだかそのほころびは恬淡とした態度の表れに思えなくもなかったのだが、とにかく真面目にやっている新国の新日本フィルとか東京フィルとか東京交響楽団都響とは別のオケ)とか、あるいはコールドとかを今まで見くびっていた自分はおバカであった。