パラドックス定数『Nf3 Nf6』(作・演出:野木萌葱、中野plan B)

を観に行った。何かやけに久しぶりに舞台。前回同様、やはり会話劇なのだが、キーワードは「どうして怒らない?殴ってみろよ」ってことだろう。キーワードじゃないか。ポイントだ。このポイントについては普段あまり考えることもないのでもう少し考えてみなければならない。どうも、それはそれで違うんじゃないか、感情のあり方として、という気もする。もちろん念頭にあるのはポツドールである。話としては前回の方がよく出来ていたのではないか。それにしても、「劇中第2局の棋譜」が「1944年FourKnightsOpening ユーディ・メニューインVSエアード・トムソン」とクレジットされていて、メニューインはもっとも好きなヴァイオリニストなので、気になってちょっと調べたがよく分からなかった。メニューインはどうやらチェスが好きだったらしいが。このメニューインが1938年に録音したメンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルトは本当に素晴らしい。素晴らしいと言うのもおこがましいと言うか、完璧である。当時弱冠22歳という若さで、まぁ逆に後期の演奏はあまりよくないのだけれど、とにかく、若々しくも奇を衒うことなく端正なフレージングが最大の特長で、音の伸びと響きの広がり、技巧と音色に関してもまったく非の打ち所がない。特にフレージングに関して、「これ以外にありえない」という演奏である。「これ以外にありえない」と言うと、なんというか、暴力的、的じゃなくて暴力そのもの、と思われるかもしれないが、なぜかクラシック音楽の演奏に関してはどうもそうとばかりも思えないのが不思議である。おそらくそれはクラシックにおける完璧さや真正性といった価値体系の位置づけに関する不思議さだろう。対置されるのは独創性や前衛性である。