東野圭吾,2006,『レイクサイド』文春文庫

読了。父に借りる大衆小説シリーズ第3弾。青山真治が映画化していたから、という理由で借りたのだが、大変面白かった!まぁ面白いと一口に言っても色々な位相の面白さがあるわけだが、この面白さは軽い、そして乾いた、整った面白さだ。センスの良い露悪描写、が良い。これは解説にも書いてあったことだが、その露悪的であるというのはつまるところ登場人物の演劇的な側面である。いかにも演技をしている感じの人々を露悪的に描くその描き方がなかなか好ましいのではないかと思った。気になったのは、中学受験というものについて、そうか、やっぱりこういう感じに書くのか、というところである。「笑うのを我慢するのに苦労しました。イヤな感じの嘲笑しか出来ないから。生まれてからずっとそうなんです。復讐心ですか?どうだろう。今の東京の子どもに比べればね。」と、「今の東京の子ども」と言ってもこれももはや3年前だ。ある種の剥奪感と無力感、そして幼稚な全能感が隣り合わせ、みたいな事を言って分かったような気になるのは容易いが、それは分かったような気になっているだけだな。この小説に関して言えば、全てを戯画化するなとはもちろん言わないが、中学受験の戯画化のされ方が気になったのだった。経験者として。