夏目 漱石,1975,『道草』,ほるぷ

読了。箱型のカバーが二重についていたり装丁が凝っているなと思ったら(画像参照)、駒場にある日本近代文学館が初版本を復刻したものだったようだ。夏目漱石はほとんど読んでなくて、『坊ちゃん』くらいしか思いつかないくらいだが、しかしまぁなんとも感想が書きにくいなぁ。センチメンタリズムに陥っていない、という点にまず非常に感心した。冷徹であるが、あたたかい。三島由紀夫がどこかで「小説を海の波だとすれば小説における会話文は白い波頭であるべきで、乱用されるべきではない」というような意味のことを言っていたが、『道草』はまさにその点から言っても素晴らしい。最後の最後のまとめ方、あの読後感はなんだ。なんだってこともないが、素晴らしかったのだった。しかしいまさら素晴らしい素晴らしい言うのもなんともはばかられることだなぁ。あと主人公と細君のやりとりはなんともはや。