Vian, Boris, 1946, J'irai cracher sur vos tombes, Paris: Scorpion. 伊藤守男訳『墓に唾をかけろ』,1979,早川書房

読了。黒人の新進作家ヴァーノン・サリヴァン著、ボリス・ヴィアン訳、といういわゆる偽書として出版され50万部売れ、風俗紊乱の廉で発禁。処女作。原題を直訳すると「俺はお前たちの墓に唾をかけるぞ」。男女の絡み、というかその周辺、経緯などの描写はさすが「恋とデューク・エリントンの音楽以外何もいらない」と言った(といわれる)だけのことはある。主人公は復讐心から白人女性に対する激烈な征服欲を持っているが、意外なことに(というか意外でも何でもないかも知れないのだが)このあたりのリビドー(フロイトにおける意味での、だが)の多くは自分も共有していると思った。いったい自分はいつの間にこういう方向性を獲得したのだろうか。