吉野耕作 1997『文化ナショナリズムの社会学』名古屋大学出版会

読了。文化ナショナリズム、という問題意識。グローバリゼーションのフロンティアに位置する人々(例えば帰国子女や英語教師、海外出張する企業人など)が積極的に文化ナショナリズムの当事者となる(旺盛に日本人論について読書し、かつ語る)という逆説的状況。日本の文化ナショナリズムにおける議論を整理したうえで、既存のナショナリズム研究を批判し、最後に自分のフィールドでの研究成果を持ってくるという流れはなかなか美しい。夏休み中に短期留学とかしていた高校の同級生が、「ナショナリズムは必然的にナチズムに帰結する」と得々と語る世界史教師に向かって、「でもナショナリズムってそんなに悪いことばかりなんでしょうか」と反駁していたのが懐かしく思い出された。この思い出は、懐かしがってばかりもいられないような示唆を含んでいる。ような気もする。