『フランス国立リヨンオペラ座バレエ団公演』(神奈川県民ホール)

を観に行った。横浜は遠いなぁ。おかげで本を読めた。さて、最初はローザス主催アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの「大フーガ」(曲はベートーヴェンの大フーガ変ロ長調)。面白くない!何だこりゃ。対位法を振付ける、というのは分かる。分かるが、あまりにクリシェに束縛されているばかりのダンスはあまりに面白くない。もちろんクラシカルバレエのように(そして多くの芸術のように)クリシェというかある種の型に積極的に同調することによって逆説的に自由性を獲得するという方向性もあるわけで、そう考えると何だこのケースマイケルの不自由さは!となる。衣裳もスーツなのであまりに古びて見える。次はサシャ・ヴァルツの「ファンタジー」(曲はシューベルトの幻想曲へ短調)。面白い。そう。コンテンポラリーダンスに求めるのはこういうことなのだ。ダンサーたちが舞台上を両手を広げて走り回っている(子どもが飛行機のまねをするみたいに。「ぶーん」って感じ)だけで観客は快楽を覚える、というのは大事なことだ。個々の動きにも新しさがあって良い。衣裳も良かった。最後はマギー・マランの「グロスランド」(曲はJ.S.バッハブランデンブルグ協奏曲第2番、第3番)。まぁ多言は控えるが、太っている身体というのはそのブルジョワ性との結びつきよりははるかに、女性に対する(最近は大いに男性に対しても)強迫観念としての存在として捉えるべきであって、その辺を今回はかなりはずしていると思った。まぁそれでもあのぶよぶよしたからだがあんなに軽々と動き回る軽妙さは確かに妙なものがあった。総じて振付家の顔ぶれと使用曲から大いに期待して行ったが、まぁそこまで面白くもなかった。期待しすぎてしまった。