新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』(作曲:W.A.モーツァルト、演出:コルネリア・レプシュレーガー、美術・衣裳:ダヴィデ・ピッツィゴーニ、新国立劇場オペラ劇場)

を観た。序曲の間は男女の合唱が舞台上でうごうご動いているのだが、これがかっこ悪い。やりたいことは分からないでもないが、微妙に音楽と呼応している辺りとか、ここのモチーフのありきたりぶりとかがださかった。これが更にラストでもやはり合唱が舞台上で見得を切るのだが、もう何というか、上塗りであった。キャストが出てくると、衣裳と装置の色が鮮やかでよい。そして何よりキャストのうまさと曲のよさ(素晴らしい重唱が畳み掛けるように。)で音楽面においてかなりの成功を収めていた。フィオルディリージのリカルダ・メルベスは演技が大味な感がなきにしもあらずだが、ドラベッラのエレナ・ツィトコーワとともによく歌えていた。デスピーナの中嶋彰子は歌うところではちゃんと歌い、面白おかしいところではしっかり面白おかしく、全体的にコミカルタッチのストーリーの中でしっかりと自分の役柄をわきまえている感じでよい。フェルランドの高橋淳は代役だが(代役なので?)よくがんばっていた。結構声が出ていて感心した。グリエルモのルドルフ・ローゼンも結構声量があったし、ドン・アルフォンソのヴォルフガング・シェーネも安定感があり、今回の公演、歌手は当たりではなかろうか。全体的な作品解釈、つまり演出にも関わる問題だとは思うが、ソプラノ二人の演技をもう少し考えてもいい気がした。ちなみにオペラ演出を判断する際のタームが「かっこいい/ださい」であることを発見したのは収穫だった。ミニマルな舞台に照明で変化をつけたり、衣裳もリアリズムではなく配色に気を使ったり(だからユニクロのCMみたいな舞台が多い)、いかによくデザインするか、というのがここ十年二十年のオペラ演出の傾向だと思う。そう考えると遅れてるな、オペラ。今回は観客のマナーが大変悪く、その点は非常に腹立たしかった。