新国立劇場『魔笛』(作曲:W.A.モーツァルト、演出:ミヒャエル・ハンペ、新国立劇場オペラ劇場)

を観に行った。変なバルコニー席で見切れまくりだったのだがこれは後でラッキーだと思うことになる。さて、実は魔笛を観るのは初めてで、あらすじも曲も知っているけれどディテイルは知らないというような感じだったのだが、やはりディテイルは重要だ。モーツァルトの旋律は端々にまで(というかこの文脈では端々にこそ)多幸感が宿っている。しかし三人の侍女にしろ何にしろ、非常に「子供向け」っぽさが前面に押し出されていて、しかもそれがくるみ割り人形のように一回転して「大人向け」にもなるという感じでもなかったので、多少気恥ずかしい気持ちで観る(そのおかげかどうか知らないが女子高生が沢山観に来ていたのはちょっと珍しくて良かったが)。キャストはとにかくパパゲーノのアントン・シャリンガーが芸達者でよかった。パパゲーナとの絡みも頗るかわいらしく、幸せな二人を見て何だか多少落ち込む。さて、休憩中に向かいのバルコニーにカメラやらカメラマンやらがぞろぞろしているので何だろうと思っていたら、何と二幕からは皇后ミッチー陛下が登場して会場騒然。変なバルコニー席だったおかげで二階正面のミッチーが舞台よりもよく見える。一幕はどうしたんだ。とは誰しも思っていたことだろうが、とにかくミッチーに拍手をする観客。終演後もミッチーに拍手。ミッチーに手を振られた女子高生絶叫。ただしこのとき観客は、ミッチーが会場を出るまではホワイエに出る事が許されず、ドアの前で五分くらい足止めされることになるのをまだ知らないのだ。閑話休題、大規模な舞台装置が面白い舞台ではあったが、多少とも幸薄い状況にある者が一人で観るべきオペラではなかった。