新国立劇場『ホフマン物語』(作曲:オッフェンバック、演出・美術・照明:フィリップ・アルロー、テノール:クラウス・フロリアン・フォークト、バリトン:ジェイムズ・モリス、新国立劇場オペラ劇場)

を観に行った。アンドレア・シェニエで休めの席が売切れてしまっていたのを思い出し、チケットセンターの開業時刻ちょっと前に当日券を買いに行ったのだが、すでにお年寄りを中心として20人ほどが並んでいた。げんなり。最初の5人くらいでZ席が売り切れ、自分がチケットを買う段になってちょうどF席が売り切れた。まぁ狙いはD席だったので全く問題なかったが。学生半額万歳。半分は演出を期待して観に行ったのだが、期待は裏切られなかった。全体的に謎めいた感じの『ホフマン物語』という作品を見事に理解可能性の地平に乗せるのと同時に、随所にキッチュアシンメトリーなど演出家の美意識を盛り込んであって素晴らしい。一幕のカンカンが今まで見たどのカンカンよりも自分の中のイメージに近くてよかった。多分あんな感じ。歌手はテノールのホフマンとバリトンのリンドルフが圧倒的な声量を誇っていた。オランピアも技巧的になかなかのものだったとは思うが、拍手はアントニアの方が大きかったことを考えると、やはり多くの観客は技巧など求めていない、というよりどういう音形が難しいかが分からないのではないか。ヴァイオリンやピアノなどの速弾きとか、よほど分かりやすいものでないとそれが技巧であるということさえ分からないのだろう。オランピアのような技巧系の役よりは、圧倒的に感情に訴えてくるアントニアの方が、というのは自分自身でも非常に納得のいくところである。それにしても泣ける。やばい。なんて悲しい話なんだ。