太宰治,1967,『走れメロス』新潮社.

読了.面白かった!太宰は,読んでも結局そんなにつらい気持ちになったりしない所がありがたい.文庫本なので,解説などがついていて,潜在的二人称のこととか,かつて心中未遂で相手だけ死なせた話などが書いてあるが,しかしこれはどういうことだろうか.自分は駄目な人間だと,よく文中にも出てくるが,いったい,どう駄目なのか,もう少し書いてほしいようにも思う.かつての女にどう恨まれ,いまも恨まれ続けているのか,ということは,往々にして実際のことはよく分からなくて,恨まれていると思っている側の人間が勝手に想像しているだけだったりするものだから,それを,どう想像しているのかに興味がある.しかしこれもまた往々にして,こちらが望むような恨み方なんて,大抵はしてもらえないものでもあろう.適当に合理化され,適当に忘れられ,あとは非常に下衆なポイントについてはさんざっぱら恨まれ,自分もその恨みの対象になることによって晴れて俗物の仲間入りを果たせるというような,そんな風な恨み方が世の常であるのであれば,悪いのは自分ばかりではあるまい(もちろんこれでもまだ見当外れであるのだろうが).別れてもなお足りないのは,コミュニケーションである.「今となっては知るよしもない」ことなど,そう多くはない.自分もあの人も,互いに知ろうとしないだけである.これはつまらない.つまらなくて参るな.