藤村安芸子,2007,『石原莞爾―愛と最終戦争』講談社

読了.「再発見 日本の哲学」というシリーズの中の一冊で,先輩から借りて,けっきょく頂戴した.しかし,これを貸してくれるというのは,何ともナイスチョイスであった!何となく右翼的でかつ宗教の胡散臭さと共にイメージされていた(自分の中で)石原莞爾が,何と,妻と共に絶対にしあわせになろうとしていた!というのは,耳に痛く,しかし,ためになった.その追求のありようが,いまいちスマートでなくまた鮮やかでもないので,衝迫,とまでいかないところではあるが,しかしその土臭さたるや,シンパシーを感じずにはいられない.となると,自分にとっての土臭さとは何なのか,と思い至るが,それは,いまだまったく片鱗すら見えない謎である.どうしてこんな人間になったのか,まったくよく分からん.原体験?みたいなことが,自分でよく分からない.まぁでも放っておけばこの調子でいくとそんな自己が解体される日も遠くないだろう.本当によく分からないので,日々格闘しており,関係各所にはご迷惑をおかけしてもいるが,「自分」が問いの対象とならず,自足している人には,むしろいい気味である.自分のことなど,どうでもいいのだが,どうでもいいにしては,何をするにも出発点になってしまう存在なので,問い返さざるを得ない.ただそれがよく見る「自分語り」のような安直さでもってされると,それは結果的に自己を隠蔽し,排除し,疎外することになるだろうと思うだけです.