に行った．最後のシーンについて，それがどういう効果を意図してのものなのか，はよく分かり，そこを放り投げていない点はよいと思ったが，それ以外のシーンは，何をどう意図しているのか（あるいは何も意図していないのか），よく分からないものが多く，それは大抵の駄目な作品が小賢しく安直で幼稚で陳腐な意図を覗かせるのとはやや異なる状況であった．人が何も考えずに作品を作ったところで，その「何も考えていない」という状態は，無我の境地などとはかけ離れたものであって，大抵は自分の手癖や安易な先入観に落ち込んでいってしまうものだが，どうも今回の作品はそのようであるようでないようなところがあり，とは言え作者の手癖とおぼしきディテイルの数々は，観ていて劇的な高揚を妨げる形で幾度も表れているのであって，つまるところ，それは，乞局の手癖が斬新であるということただそのことのみを示しているのかも知れず，ただそうだとしてもそれが凄いことなのかダメなことなのかはやはりよく分からない．
