ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団『フルムーン』(新宿文化センター)

に行った.人生は基本的にハッピーだと思っている奴がいるとして,一方で人生は基本的に退屈だと思っている奴や,他方には「人生が云々なんて言っちゃってるよ,うわー,恥ずかしい」と言う奴がいて,しかし,基本的に退屈だししかしそう思うことすらも恥ずかしいとは思うもののとは言えそう簡単にハッピーにはなれない人が,ハッピーになれる舞台である.水を使った舞台ということで,舞台上で『甘い生活』のラストが表象され続けると思えば,何と言ったってハッピーじゃないか.それはもちろん上演中と終演後わずかのあいだしか続かない感覚ではあるものの,しかしその時舞台を前にしたその感覚が完全に自分のためだけのものであったことは,別離した恋人さえもが恋愛中には完全に自分のための存在であったことと同じである.それを思う存分に祝福し,思う存分に悼むことを憚る必要など,我々の誰にもない.