高見沢実,2000,『初学者のための都市工学入門』鹿島出版会

読了.思い出すのは,3年ほど前に,「都市工学」という分野が何をしているのか,親しい友人と話をしたことである.「都市」は知っているようでいて「工学」はまったく知らず(今も知らない),結局,ビル風の研究でもするのだろうと思いついて,何てバカらしい分野だろうと,自分の思いついたことに自分で笑っていたのだった.だいいちビル風の研究って何だよ.しかしスケールは大きそうだし,ビル風の吹きすさぶビルの谷間で,白衣を着た人々が何かを測定したり書いたり話したりしているのはちょっと面白そうだ.それでたとえば街路樹を一本増やしたり減らしたりすると,劇的にビル風がなくなったりする.なくなることがいいことなのかどうか分からないが.そういえば,さる高名なクラシック音楽の指揮者が,どこかのレストランの騒がしい厨房をぐるりと見回して,ちょっとした物の配置を動かして,その騒々しさをまったくの静穏さへと変えてしまった,というような話も,また,思い出される.構造を完全に把握する事へのロマンチシズム.