伊藤比呂美,2007,『コヨーテ・ソング』スイッチ・パブリッシング

読了.ぼーっとしているとがつんとやられることがあって,たとえば何の気なしに観ていた映画にがつんとやられたりするというようなことだけれど,この本はぼーっと読んでいて,知らないうちにじわじわやられた.先日のSPACの公演で朗読された作品.朗読されたのはこの中の特定の章だけだけれど,その中の特に「同行二人」は,素晴らしい密度と強度で,ナイス・チョイスであったのだなと思った.ふと,世界は非常に狭小なようにもまた一方で広大なようにも思われて,それらのイメージが,行為の指針を奪い内面に混乱を呼ぶ.ただ,放っておけば時間は経つし,時間が経てば事が起こり,事に際しては人は或いは動じることもあるだろうから,まぁ,放っておけばよいのだろう.行動はいつもそのために起こす.