勅使川原三郎『ミロク』(出演・振付・美術・照明・音響・衣裳:勅使川原三郎,新国立劇場小劇場)

を観に行った.久しぶりに観ておくか,というごくごく軽い気持ちで行ったら,これが最高であった.2007年に何を観たかもうほとんど忘れているが,最高の舞台だった.最初から最後まで勅使川原のソロであり,おそらくそれがもう単純に素晴らしかったということなのだろう.それにしても,よく動いていた.あれだけ動けるのは凄い.いわゆる手数の多いドラムみたいな感じで,単位時間あたりの振りの数がめちゃくちゃなことになっているのだが,そこに加えて,緩い動きや微妙な動きにも魅力的な身体性が現れていて,素晴らしい.動いているのか動いていないのか分からないくらいのゆっくりとした動きから,振付じゃなくてめちゃくちゃに振り回しているだけなんじゃないかと(一瞬)思わせるスピードまで,異常なほど豊富なヴォキャブラリーで,一時間強.照明・美術・音響にも必然性があり,また,そういう総合的な道具立ての中で,身体が疑問に付される部分はちゃんと疑問に付されるので,もうこれ以上なにを望もうかという舞台であった.あ,最後の演出だけはちょっと,留保をつけたい気もするが,そんなことは些末なことである.こういうもののために舞台に通うのだ!