デヴィッド・リンチ監督,2006,『インランド・エンパイア』(出演:ローラ・ダーン/ジェレミー・アイアンズ/ジャスティン・セローほか,アメリカ,カラー)

を観た.恵比寿ガーデンシネマ.面白かった!寝不足だったし三時間とか絶対寝るよなーと思っていたら面白くて寝なかった.しかも,久しぶりに,何が面白いんだかよく分からなくて面白かったのが素晴らしい.でも今はもうだいたい分かってしまった.千円もする高価なパンフレットを買ったら菊地成孔湯山玲子川勝正幸トークが載っていて,自分の見方は間違っていなかったので安心した.やや疑問に感じたと言えば,自分は象徴主義的なものが苦手で,たとえばカフカ安部公房はよく分からない(誰か教えてください).カフカの中では「変身」とか「流刑地にて」とか,ある描きにくい感覚をああいった形で描くというのならよく分かるのであるが,「審判」なんかはよく分からないのであった.それで宮沢章夫もよく分からないのに,この映画はどうして面白いのかしらと思っていたら,別にそんなことはどうでもいいからだった.つまり,この映画においてそういった象徴主義的な位相は別にどうでもいいのである.それは「クレマスター」や「拘束のドローイング」での象徴が比較的どうでもいいことに近いかも知れない(ただし「クレマスター」の場合はシンボリックな点についても圧倒的な上手さがあって何とも言い難い).そういった意味ではタルコフスキーに近い映画なのだろうと思うのだが,語彙も統語法も違うので,全然近くないのかも知れない.とにかくみんな観よう『インランド・エンパイア』.あと上に書いたトークでも言っていたけど,ラストのカタルシスは凄い.サイコー.って感じです.