高村薫,2006,『照柿(上)』講談社

読了.父に借りて読む大衆小説シリーズ,第何弾か忘れた.文章の細部や話の構成に疑問がないわけではないが,ともすれば笑ってしまいそうになるこのハードボイルドな感じというかギラギラした感じというのは,実は,自分が大変にハードボイルドな(フィクショナルな)人間なので,読んでいてわりと面白い.そしていつも疑問なのは,あの男もその彼も,自分の知る色々な男たちが,自分と同じように,あのぎらつく気持ちで女を追ったことが果たしてあるのだろうか,ということだ.そのような経験が何人にも共有されているなどということはどうもにわかには信じがたいのである.