ポツドール『人間失格』(脚本・演出:三浦大輔,三鷹市芸術文化センター星のホール)

を観に行った.んー.劇中の転轍点に説得力があったかどうか,ということが強いて挙げれば疑問であるが,そんなことはどうでもいいのかも知れない.相変わらず(とりわけ再演『激情』以来)基本的にディテイルとかの作り方がうますぎて,職人的な抜群の安定感がある.やはり相変わらず,いまもっとも観ておくべき劇団であることに変わりはなかったのであった.そして,後半というか,転轍以後のくだりというのは,『人間失格』よりはむしろ『罪と罰』なのではないか.と,ここまで書いて他人さまの感想を読んだりしていると,「誤読」ばかりであるように思われて,それは,やはり,人間の思考の転落にまつわる現象なのだろうと思う.綱渡りをするように,注意深く,ありがちだったり楽ちんだったりする落とし穴に落ちこまないように丹念に対象に寄り添い続けることは,これはほとんど終わりのない懸垂のようなものであって,容易なことではない.ポツドールを正しく読もうと思うなら,この転落には気をつけなければならないが,隘路というのはそこに落ち込みやすいから隘路なのであり,水は低きに流れるのである.分水嶺の上に一筋の水の道を通そうとするなら,さまざまな陥穽に注意を向けなければならず,それは,ちっとも簡単なことなどではないのである.たとえば,「今回のポツドールポツドールを再生産しているだけだ」という指摘がいくつか見られたが,それは,本当にそうか?そして,それは問題なのか?擬似問題ではないか?いや,ややポツドールを擁護しすぎかも知れない.