青山真治監督,2000,『ユリイカ』(出演:役所広司・宮崎あおい他,日本,カラー)

をDVDで観た.見終わってから,浅田彰がこの映画を激賞している文章をネットで発見してしまって,なぜかやや暗鬱な気持ちになる.これはなぜだろうかと考えてみるに,その断定口調を「暴力的」だと感じ,しかもその「暴力」にやや恐怖したからであるように思う.日頃の自分であればそれを「暴力的」であると感じたりすることはないだろうし,こんな生ぬるい使い方で「暴力」という言葉を使うことなど,それこそ断定的に糾弾するであろうに,しかし今はそれに恐れをなし,暗鬱な気持ちなのである.これは映画の内容とは決して関係ない(いや,結果的にはあるかも知れないが,これを観たのが原因では決してない).とにかく,人を恐怖させるようなことは,したくないな.と,今までもしてきた何度目かの同じ悔悟を,しかしまた新しいかたちで反復しているが,しかし,うまく書けないが,「なめくさっている」というような言葉がある.その言葉のあらわすような何事かに対して,今は怒りよりもシンパシーを,シンパシーすら,感じてしまっている珍しく.こうやって何を書いてもこの映画の中に思い当たることがあるのは,それはなかなか映画としては立派なことなのかも知れない.