アラン・プラテル・バレエ団『聖母マリアの祈り vsprs』(原曲:クラウディオ・モンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」,オーチャード・ホール)

を観た.面白かった!単純に面白かった!という風になるダンスを観たのは久しぶりである気がして,この単純さの恩寵たるやなかなかどうして得難いものである.まぁまず何よりも生演奏がかっこよかったのだった.シンコペーションの威力は凄い.そうしてその演奏に対してダンサーたちは,なんだか「踊らないぞ,踊るものか!」と思っているかのように振る舞っているように思えて,その態度は大変好ましいものに思えた.各人が高い身体能力を具えながら踊りを拒絶する,その拒絶の仕方がなかなかよろしかったのではないか.ただ写真を見れば分かるとおり,ピナ・バウシュの『カフェ・ミュラー』なんかよりはずっと見た感じは踊っているように見えるシークエンスも多々ある.いわゆるダンスっぽいヴォキャブラリーを踊らなくてもその反復性や,あるいは「これはダンスですよ」という提示の仕方によって,からだはいくらでもダンスになるのであって,そして逆もまたしかりである.その「踊らなさ」みたいなことが,おそらくはこのあまりにキリスト教臭の強い作品には非常に適合的であったのだろう.ちょうど自分がキリスト教臭い精神状態だったので,またこれはすんなり受け入れることが出来た.