能楽現在形『鐵輪』(シテ:狩野了一,世田谷パブリックシアター)

を観た.プログラムは,舞囃子『猩々乱』(シテ:友枝雄人)と能『鐵輪』(シテ:狩野了一).やや安直な話になるが,やはり生演奏があってコロスがいて,そして踊りがあってストーリーがあると,これは鉄壁であるなあ.ただそれがザッツエンターテイメントな感じにならないのがまた能の面白いところである.今回の上演は能楽堂ではなく普通の舞台上でやったので色々変則的だったが,特に照明効果は大きかったように思う.能においては客電すらも落ちず,舞台上の照明は全く変化しないのだが,今回は客電を落とし照明に変化をつけていた.そうするととたんに演劇に見えてくるから不思議である.そして,演劇に見え出すと,これはまた凄くよい演劇なのではないかと思えてくるのであった.単純に演劇に見え出すと,能というものの上演の強度には驚くべきものがある.囃子方はもちろん,シテをつとめた二人も上手だった.ただ,上手ということと,その上手さから叙情が生まれることは全く別のことなのだな.イングウェイのことなど考えるまでもなく,まぁそうなのだ.