トッド・ソロンズ監督,1998,『ハピネス』(出演:ジェーン・アダムス / フィリップ・シーモア・ホフマンほか,アメリカ,カラー)

を観た.VHSで.監督の名前とか知らないし,フィリップ・シーモア・ホフマンは好きなのでという感じだったが,意外と一筋縄ではいかない映画であった.人の殺し方とか,セクシュアリティの扱い方,あと何よりきついのはやはりペドフィルの話であって,そのあたりをこう一身に引き受けて,おおむねブラックコメディの世界に持って行った映画というのは,これは評価が難しい.笑えない現実を,その笑えないところからスタートして何とかディール可能な対象にするために,笑ってしまいたい,何とかして笑いたい,って感じの映画だ.一応信賞必罰っぽくはなっているものの,評価が難しいというか,もう圧倒的にポリティカリー・インコレクトなものであるかも知れなくて,そのあたりを「かも知れない」としか言えないのは我ながらどうかと思いこそすれ,とにかく,その正しくなさとかファックな感じをどう引き受けるのかということだ.一歩間違ったらだめだめなところをうまく回避している,ということをよく書いている気がするが,この映画は特にその要素が強く,どぎつい.ので,バランス感覚のあるセンスのいい人に観てほしい.バランス感覚のない人というのは精神的に育ちが悪くて堪え性がないものだから,すぐに「人間ドラマ」とか「ヒューマン・コメディ」とか「許し難い」「観ていられない」「悲しすぎる」なんていう一面性に落っこちてしまう.いろいろ複雑な思いはあるんだけどこの映画は結構好きだ.特に,誰も何も成長せず,ただ子どもは射精を習得する,という,それがもう何というかほとんど説話的である.