『マリンスキー・バレエ オールスター・ガラ』(東京文化会館大ホール)

に行った。別に光が見え始めてなどいない。見えてくれ光。さて、オペラにしろバレエにしろガラというものを軽蔑してやまない自分でありますが、世界のマリインスキー(マリンスキーとも表記するが)ということで、ないミーハー精神を無理矢理ひねり出して(ところでミーハーというのはミーちゃんハーちゃんの略であることはよく知られているが、ミーちゃんはミカちゃんでハーちゃんはハナちゃんという、どちらも女の子によくある名前、というのは本当なのだろうか?)行ってみたところ、ガラというものに対する嫌悪を新たにして帰ってきたのでありました。いや、嫌悪は言い過ぎだけど。やはりクラシックバレエというのはサーカスに近いのだな、アイススケートと一緒で、と思いながら観ていたら、最後は本当にもう潔いほどにサーカスになっていたので、それならそれでこちらもそういうつもりで観てやろうと思って観た。もちろんサーカスに対置されるのは芸術だろう。そして芸術としてのバレエとか言い始めると口がかゆくなるのでまぁやめるとして、とにかく単純に高く跳べたり難しいことを出来たりするのは凄い。単純に凄いことを馬鹿にしてはいけない。ということの反動で、単純に凄いことを買いかぶってもいけないのではないかという気もするけれども、とにかく、まぁ、「単純に凄い」ということは単純に凄い。と言っておこう。一秒でも早く走ったり一センチでも高く跳んだりするということを認めなければ何も始まらないというようなことを三島も書いていた。それにしてもちょっと前まではバレエの身体はただそれだけで美しくてわりと感じ入ることが出来たのだが、今回はただそれだけで美しいと言うよりはただそれが美しいだけと言う感じで、なんというか、クラシック音楽を構成する一つ一つの音が美しいのと同じ、ただその程度にしか感じなかった。クラシック音楽の一つ一つの音が楽音として美しいだけで感動することがないわけではないがそれはよほどのことであって、バレエでも同じことを感じたのであった。きれいなだけで、陳腐であるとさえ思った。そんなわけで気が散ってオケピのほうに目をやったりしていたのだが、パーカッションの三人目が私語ばかりするはサスペンドもクラッシュも叩き方が本当にやる気ないはで、やりたい放題だった。酔っていたと言われたら信じる。しかしそれはそれで職業音楽家っぽいのかも知れず、思い返せばデートコースのホーンも私語をして落ちたりしていた。フェリーニの『オーケストラ・リハーサル』を、あまり関係ないかも知れないけど、思い出した。