押井守監督,2004,『イノセンス』(原作:士郎正宗,出演:大塚明夫 / 山寺宏一 / 田中敦子 / 竹中直人ほか、日本、カラー)

を観た。DVDで。前作『攻殻機動隊』よりもまだ好ましい感じがしたのは、少佐の出番が少なかったからだと思う。あの辺の「本当に現実?」みたいなせりふは本当にもうよしてくれよという感じで、たとえば、「全部どうでもいい」と言明することは、不可能だ。それは欺瞞だ。どうでもいいなら、何も言えまい。全部どうでもいいと言っていたような次の日、って感じだ。言明がある限り、会話がある限り、そこには他者の想定とコミュニケーションへの企図が必ずある。しかもどちらも想定と企図という言葉では全然甘くて、むしろ必然的に前提すると言っていいし、「他者が存在しコミュニケーションが可能である」世界観に必ずやナイーブにコミットせざるを得ない。そこに選択肢はないのである。だからこそ、「人格を手段として扱う」ことは、悪と言うより欺瞞なのだ。一日のうちのある一定以上の時間は、ナイーブに夢中になっている時間があるはずだ。問題はその時間に嘘をつかないかどうかであって、たとえば「他の人を踏み台にしてでも」みたいなことというのは、ナイーブな対人コミットメントに対して嘘をついているので、だめ。そうなると、これはもはや、逃げ道はないのである。