『若林圭子リサイタルVol.4』(銀座博品館劇場)

に行った。大変特徴的な観客層で、同行した人が「生活にずいぶん余裕がありそうな」人たちと評したのは言い得て妙である。しかしそれにしても超絶のうまさ。特定の箇所でいつもピッチが低いように聞こえたのだが、それはもしかしたらシャンソンに固有の音階のあり方なのかも知れない。だとすればリズムだけではなくピッチもいい感じになまっているということで、それはとても素晴らしい。表現力、と言っても千差万別色々あるわけだが、言うなればブーレーズ指揮クリーブランド管のような、表現の細やかさがあった。微妙なニュアンスを明確に伝える力とでも言おうか。それはつまるところは音を微分的にコントロールする力である。要するに、素晴らしい歌手だったわけだ。しかし、まったく感情が動かされなかった。これはどうしたことか。文句なしに素晴らしかったはずなのだが。