『9月文楽公演<第一部>』(国立劇場小劇場)

を観に行った。9月文楽公演は通し狂言仮名手本忠臣蔵』である。朝の部第一部は塩谷判官が切腹して城を明け渡す四段目まで。いやー、面白い!めちゃくちゃ面白い。自分は歌舞伎を観ても(といっても片手分くらいしか観たことないが)いわゆる様式美っていうものに対して美として感じ入ることがあまりないのだが、浄瑠璃ではよく分かる。いや、もちろん歌舞伎でもどこのどういう部分がどのように様式美なのかは分かるのだが、それが美的感覚を刺激しない。浄瑠璃はその点きわめてすんなりと腑に落ちる美しさの感覚がある。それにしても様式美という言葉の分析能力やいかん、だ。いかん、というか、あまりない気がする。ということを考えさせる人形は凄い。人間ばっかり見ていたんじゃ駄目だという気にさせられる。偽悪的に、敢えてレトリカルに言えば、限りなく人間に近づいた人形の向こうには、限りなく人形に近い人間が透けて見える、のである。