『冨永昌敬監督特集上映』(テアトル新宿)

を観に行った。『パビリオン山椒魚』公開記念の特集だそうである。上映は、『パビリオン山椒魚』の主題歌"KEEP IT A SECRET"のPV、『南米のエリザベス・テイラー』所収『京マチ子の夜』のPV、『テトラポッド・レポート』(2003)、『亀虫』(2002-3)の順。さて、実は冨永監督はチェルフィッチュ『三月の5日間』再演のアフタートークで一度拝見していたのだが、映画は初見。真っ先に気がつくのは音。音が何だ、ジャンプカットみたいな感じになっていて、「モノローグ」という言葉に対して新しい地平を開いている。言うまでもなく、画面に、映像に文体が、スタイルがあるのはもちろんなのだが、それについて分節化して語る術を知らない。邪推すると学生映画からそう遠くはない映像なのではないかという気がする(学生映画ってほとんど観たことないから知らないけど)。それは当然仕上げみたいなところで一線を画するとは思うものの、それとは違うレベルでどう一線を画しているのか(そもそも一線を画しているのかどうか)、それが知りたい。そういえばモノローグ云々ということで、そのモノローグの内容がまるで宮沢章夫みたいだったのには驚いた。いや、驚くには値しないことなのかもしれない、というのは、目白通りだからだ(どうでもいいが『亀虫』に出てくる目白通り周辺が見知ったところばかりで微苦笑。弟が行っていた床屋とか、神社とか。)。それはチェルフィッチュの作品でもそうだし宮沢章夫の近作でもそうだが、土地から出発するのだ。どこでもない場所、などというところからはスタートしない。しかしここでトポスとか言うのはあれだ。安直だ。でもまぁトポロジーみたいなことについて思いを致さない作品が多々あるなかで、トポスという発話を誘発させた点は大いに評価できる。