アルノー・デプレシャン監督 2004『キングス&クイーン』(脚本:アルノー・デプレシャン、出演:エマニュエル・ドゥヴォス / マチュー・アマルリック / カトリーヌ・ドヌーヴほか、フランス、カラー)

を観に行った。渋谷イメージフォーラム。素晴らしい!二時間半となんとも尺の長い(感覚の問題だが)映画だったが、まったく長いと思わなかった。映画が始まってまず気づくのが、音楽に対する意識が独特であること。これは凄い。自分が映画や演劇に音楽をつけるとしたらこの様につけるであろうというのと驚くほど一致していて、驚いた。とにかくよく音楽が挿入されるのだが、選曲やタイミングなど、大変素晴らしい。映像面ではフレーミングなどに高い意識が垣間見える。と、序盤でほぼ技術的な諸側面について評価する土台が出来上がって、映画を作る、ということに対して大変自覚的な監督なのだな、と思った。しかし中盤から終盤にかけて、凄まじきはプロットである(まぁその凄まじさは語る順序の問題も多分に含まれるのでストーリーと言わねばならないところかもしれないがその辺の用語はどうでもいい)。映画についてストーリーやストーリーテリングのことをごちゃごちゃ言うのはあまり好きではないものの、この映画は大変素晴らしい。人間観もよい。ただし、どう読むかについては議論の余地があるかもしれない。ないかもしれない。最後に特筆すべきはキャラクター造形である。登場人物の人物像が普遍的である。おそらくは誰も手放しで肯定されてはいない脚本であるが(多分。もしかしたら違うかもしれないがちょっと考えてみないといけない)、しかしかならず誰かに感情移入出来るように作られている。いやー。色々な面から見て、良く出来た映画であった。そして何よりも、「あーよい映画だった」という単純な読後感に回収しきれない心理的なノイズが、ちゃんと、残ることだろう。ちゃんと。たまにノイズだけ目指しているような映画とかまぁほかにもいろんなジャンルの作品を見かけるが、そんなものはファックだ。ノイズとは何かについてもっと考えないといけない。あと書き忘れていたけどエンドロールで無音が。うおー。さらに追記すると、劇構造の最外殻部分、というか何というか、ノラのモノローグ、というものをどう捉えるか、という問題が。問題か。問題なのか本当に。とにかくちょっと考えさせられる。