Vian, Boris, 1953, L'Arrache-cœur. 滝田文彦訳『心臓抜き』,1979,早川書房

読了。ボリス・ヴィアンの遺作であるが、没年は1959年(享年39歳、自作小説『墓に唾をかけろ』の映画化である同名映画試写中に心臓発作で死亡)である。晩年の六年間は小説を書いていなかった計算になるが、トランペットでも吹いていたのだろうか。しかしこの作品は何とも読んだことあるようなないような感じで、あるとしたらそれはあるいは筒井康隆であるいは小松左京なのかもしれないが、しかしまったくその周辺に回収できない強固な物語構造を具えている点が特異であり素晴らしい。あぁ、ルイス・キャロルも思い出した。しかし物語世界へ読者を巻き込んで行く力たるや驚くべきものがある。何をどう読んだらいいのか、という点はまだまだ考えなければいけないだろうとは思うが、うーん。「現代の神話」と言われるらしいが、その安直なキャッチコピーもなんだかうなずいてしまうほど見通しがよくかつ強度を持った構造である。